起業家大学通信1107


2011年7月号

~技術力と研究成果を事業化する方法~
研究開発型ベンチャーの経営戦略

株式会社ユーグレナ
代表取締役 出雲 充(いずも みつる)氏



今月のマンスリーリーダー
出雲 充(いずも みつる)

今回のゲストは株式会社ユーグレナ代表取締役 出雲 充さんです。皆さん、ユーグレナって何だと思いますか?和名はミドリムシ。小学校の理科で習う、単細胞生物です。
そういわれれば、「ミドリムシ」という呼称はほとんどの方が聞いたことがあるのではないでしょうか。
「ミドリムシ」で世界を救う!これが出雲さんのミッションです。

私がこの対談を聞いて学びになった点はたくさんありますが、特に2つの点が大きな学びになりました。

1つは、研究開発型ベンチャーを立ち上げるにあたり、ミドリムシは59種類もの栄養素が含まれているそうですが、その特徴を見事に事業化までこぎつけた点です。
研究開発者にありがちな「研究する楽しみ」に満足してしまい、いいものであってもそれが世の中に出ていかない、理解されない=事業にはならないというケース。
このようなケースが多い中、多くの協力者や応援者を集め、事業化していったこと。
これは出雲社長の熱い想い、純粋な想い、自分が言い訳できないように株式会社を作ったなど、周りの人を巻き込む力があったから実現したと思います。まさに、想いを貫くという点において私達経営者に多くの気づきを与えてくれています。

2つめは、立ち上げ当初3年間は全く売れなかったそうです。私がもし3年間も売れない状況が続いたらどうしていたでしょうか?恐らく、撤退しているはずです。もちろん、撤退するのが悪いわけではありません。現代のように変化のスピードが早い時代は、撤退戦略も考えておく必要は当然あります。
しかし、ここで強調したいのは「最初のチャンス」を逃さなかったことです。全く売れない状況が続いていたときに、遂にチャンスがやってきました。伊藤忠商事がミドリムシの商品化に乗り出してくれたのです。
このチャンスをを逃さなかった。
その後、次々と他の会社も参加してくれたそうですが、最初のチャンスを活かせなかったら、今もなお「売れない期間」が続いていたかもしれません。
私たちが事業を行う上でも、大なり小なりチャンスはやってきます。しかし、そのチャンスを活かせるかどうかは、普段から準備をしているか、チャンスをつかめる会社になっているかが重要です。出雲さんは、悪戦苦闘していた3年間でもやるべきことをやり、準備をしていたからこそ、このチャンスをつかんだのだと感じました。

この対談は、もし自分がミドリムシを事業化、商品化するとしたら?このようなキーワードを頭に描きながら聞くことをおススメします。きっと大きなヒントが得られるはずです。

(平間 正彦)

プロフィール
出雲 充 (いずも・みつる)

東京大学農学部卒、2002 年東京三菱銀行入行。
2005 年8 月株式会社ユーグレナを創業、同社代表取締役。
同年12 月微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。
米スタンフォード大学『アジア太平洋学生起業家会議』日本代表(2000 年)、米バブソン大学『プライス・バブソン』修了(2004 年)、内閣官房知的財産戦略本部『知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会』委員(2010 年)等務める若手起業家の一人。信念は『ミドリムシが地球を救う』

<会社概要> 株式会社ユーグレナ
世界の食料問題と環境問題の解決を目的にユーグレナ(学名:ミドリムシ)の研究開発を行う東京大学発ベンチャー。
人間が必要とする栄養素のほぼ全てを含むという特性を持つユーグレナを使用した機能性食や化粧品の開発・販売事業のほか、ユーグレナによる二酸化炭素の固定化やバイオ燃料の研究・開発を行っている。
会社HP:http://www.euglena.jp/

hiramabu.jpg解説:
平間 正彦
(ひらま まさひこ)
人材活性化コンサルタント
トニーブザン公認マインドマップインストラクター
全国展開する教育出版社において、最年少支社長として活躍。6店舗を統括し、8年間勤務。2002年10月、子供の無限の可能性を最大限引き出す個別指導塾ドリームスタディを設立。塾の勉強が楽しくて勉強嫌いでも30分前に来てしまう生徒が続出。子供の将来に焦点を当てたワークショップや各種体験講座も開催。地域密着型のオンリーワン個別指導スタイルを確立する。15年間で2000組以上の子供や親の学習面とメンタル面の問題解決を支援。
2006年からは人材活性化コンサルタントとして、若手起業家を中心に心理カウンセリング・ポテンシャルアドバイス・人材育成カリキュラム作成支援、マインドマップを活用したビジョン構築のサポートも行っている。

この対談から学べる!ポイント

  • なぜ、農学部を卒業して銀行に就職したのか?
  • 大学発ベンチャーのスタートラインは「技術力」ではない
  • 苦労して得た研究開発の成果を営業で上手に伝える方法
  • 大学で高評価でも世の中の支持を集めなければ続かない
  • 全くと言っていいほど売れなかった起業後の3 年間をどう乗り越えたか
  • たった1 度のチャンスを必ずモノにするには?
  • 研究開発型ベンチャーの社長に求められる研究・金融・営業の才能
  • 研究の対極にある「お金の流れ」を知ることが社長の役割
  • 研究開発メインだからこそ営業活動と資金調達活動が不可欠
  • 思い入れの強い研究成果を営業で話しても成約できないのはなぜ?
  • 助成金と補助金をアテにしていては経営継続はできない


ベストセラーズチャンネル 今月のゲスト
起業家大学では、.FM放送ラジオ番組「Bestsellers.FM」の中で、ビジネスパーソンや経営者に「読んでもらいたい書籍」を取り上げ、本の著者・編集者を招いて執筆の裏話やより深い話を聞く番組を企画・プロデュースしています。 
これまでには、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の山田真哉氏、「鏡の法則」の野口嘉則氏、「ユダヤ人大富豪の教え」の本田健氏、「日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉」の原田泳幸氏など、数多くの方々を取り上げてきました。
今月も、素晴らしい本の著者・編集者の方々にご出演いただき、内容も非常に充実しています。是非、アクセスしてみてください。


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